地方公営企業の消費税――資本的収支調整額と特定収入の調整を、決算書で読む

青い背景に水滴のマークを配した、水道ラボの記事画像

水道事業の会計担当者が、異動して最初に戸惑うものの一つが消費税です。決算書は税抜きで作るのに、予算書の資本的支出は税込み。仮払消費税と仮受消費税の差は納税額になるはずなのに、「資本的収支調整額」という聞き慣れない補てん財源が出てくる。さらに、補助金や負担金が多いと「特定収入」の調整が要る、と言われます。

この記事では、消費税法と同施行令、地方公営企業法施行規則の条文、総務省の決算状況調査の作成要領をもとに、公営企業の消費税の仕組みを整理します。実例として、福島県郡山市の令和6年度の水道事業会計決算書から、資本的収支調整額と特定収入の記載を読みます。

目次

公営企業は「会計ごとに一の法人」として扱われる

消費税法第60条第1項は、国や地方公共団体が特別会計を設けて行う事業について、その特別会計ごとに「一の法人が行う事業」とみなして、消費税法を適用すると定めています(政令で定める特別会計は、一般会計の業務とみなす例外があります)。水道事業会計は、自治体の一般会計とは別に、それだけで納税者になるということです。

同条第7項は、一般会計の業務として行う事業については、消費税を納める義務の免除(第9条)などを適用しないと定めています。裏を返すと、特別会計で行う事業には、免除の規定が適用される余地があります。実際に免除されるかどうかは、基準期間の課税売上高などの条件で決まるため、自団体の判定は税務署や顧問の税理士に確認してください。

もう一つ、公営企業に特有の扱いがあります。第60条第2項と施行令第73条は、資産の譲渡等と課税仕入れを、地方自治法施行令で定める会計年度の所属区分に従って、その会計年度の末日に行われたものとすることを認めています。自治体の会計年度の考え方を、消費税の課税期間の判定にも使えるという特例です。

税抜経理の仕訳と、控除対象外消費税の扱い

地方公営企業法施行規則第19条は、消費税と地方消費税に相当する額を、課税資産の譲渡等や課税仕入れについて、仮払消費税及び地方消費税勘定または仮受消費税及び地方消費税勘定で整理すると定めています。税抜経理の方式です。

場面整理する勘定根拠
料金収入など、課税売上にかかる消費税仮受消費税及び地方消費税施行規則第19条
修繕費・工事費などの課税仕入れにかかる消費税仮払消費税及び地方消費税施行規則第19条
仕入税額控除ができず、資産にかかる消費税(控除対象外消費税額)長期前払消費税に整理することができる。翌事業年度以降20事業年度以内に、毎事業年度均等額以上を償却する施行規則第20条
地方公営企業法施行規則第19条・第20条から作成

期末に、仮受消費税から仮払消費税を差し引いた額が、おおまかな納付額の目安になります。ただし、課税売上高が5億円を超える場合や、課税売上割合が95%に満たない場合は、控除できる仕入れの消費税額の計算が変わります(消費税法第30条第2項)。課税売上割合の計算には、預金利息などの非課税売上も関わるため、自団体が該当するかを確認してください。

控除できなかった分は、費用なのか資産なのかで扱いが分かれます。資産にかかる控除対象外消費税額は、施行規則第20条で、長期前払消費税として繰り延べて償却することが認められています。償却額は、決算状況調査では「その他営業外費用」に記入します(作成要領)。この仕組みは貸借対照表の記事でも触れた、固定資産の「投資その他の資産」の中の長期前払消費税とつながっています。

資本的収支調整額――税込みの4条予算と、補てん財源の関係

水道事業の予算は、収益的収支と資本的収支に分かれます(収益的収支と資本的収支の記事)。このうち、決算報告書の収入・支出は税込みで記載されます。郡山市の決算書でも、決算報告書は税込み、その他の書類は税抜きで記載すると注記されています。

そのため、建設改良費の中には消費税相当額が含まれていて、この仮払消費税は、納税のときに仮受消費税と相殺されます。つまり、税込みで支払った建設改良費のうち、消費税分は後で戻ってくる(納税額が減る)ので、資本的収入が足りない分を補てんするときに、この消費税分を財源の一つとして使えます。これが「消費税及び地方消費税資本的収支調整額」です。

総務省の決算状況調査の作成要領(平成28年度版)では、補てん財源の欄に「消費税及び地方消費税資本的収支調整額」を記入する項目があり、補てん財源として使える消費税及び地方消費税の内部留保資金(税込み当期純利益−税抜き当期純利益−当該年度購入した貯蔵品に係る仮払消費税及び地方消費税額)のうち、実際に補てん財源として使った額を記入すると説明されています。同じ要領の質疑では、補てん財源の「その他」の例として、引継現金や引継貯蔵品とともに、この調整額が挙げられています。

なお、補てん財源の全体像は内部留保資金の記事で、資本的収支の不足額の補てんの考え方は会計担当者の1年の決算の項で整理しています。

実例:郡山市の令和6年度決算で見る調整額

郡山市の令和6年度水道事業会計決算書(郡山市「令和6年度 水道事業会計決算書」)では、資本的収支の不足額が、次のように補てんされています。

項目金額(円)
資本的収支の不足額4,712,388,990
 うち 消費税及び地方消費税資本的収支調整額378,938,334
 うち 損益勘定留保資金2,552,703,797
 うち 減債積立金615,133,252
 うち 建設改良積立金1,165,613,607
郡山市「令和6年度 水道事業会計決算書」の決算報告書から作成。資本的支出は4,954,183,215円、資本的収入(繰越工事資金を除く)は241,794,225円

4つの財源の合計は4,712,388,990円で、不足額と一致します(水道ラボで確認)。決算報告書の資本的支出に含まれる仮払消費税は380,204,087円、資本的収入に含まれる仮受消費税は1,265,753円で、差し引くと378,938,334円になり、調整額と一致します。資本的収支調整額は、建設改良費などに含まれる消費税相当額と、資本的収入に含まれる消費税相当額の差だと、決算書の数字から読み取れます。

不足額に占める割合は約8.0%です。財源の中心は損益勘定留保資金で約54%を占め、調整額は積立金(減債積立金と建設改良積立金の合計約17.8億円)よりは小さいものの、無視できない大きさです。

特定収入――補助金や負担金が多いと、控除できる消費税が減る

消費税法第60条第4項は、特別会計を設けて事業を行う地方公共団体について、課税期間に「資産の譲渡等の対価以外の収入」(特定収入)があり、その割合が僅少でない場合は、仕入れに係る消費税額の控除額を、特定収入に対応する分だけ減らすと定めています。

対価以外の収入とは、料金収入などの代金ではない収入のことで、補助金、負担金、寄附金などが典型です。ただし、施行令第75条第1項で、次の収入は特定収入から除かれます。

  • 借入金や債券の発行に係る収入(返済のための補助金などの交付が法令で決まっているものを除く)
  • 出資金
  • 預金、貯金、預り金
  • 貸付回収金
  • 返還金、還付金
  • 使途が、課税仕入れ・課税貨物の引取り・借入金の返済のいずれにも当たらない支出(人件費など)に限定されている収入

「僅少でない場合」の基準は、施行令第75条第3項で明確に決まっています。特定収入の合計額が、資産の譲渡等の対価の額と特定収入の合計額の和の5%を超える場合です。5%以下であれば、この調整は必要ありません。5%を超えた場合は、同条第4項に従って、特定収入のうち課税仕入れ等にのみ使うと決まっているもの(課税仕入れ等に係る特定収入)に110分の7.8を乗じた額などを、控除できる税額から差し引きます。使途が決まっていない特定収入には、調整割合を使った計算が加わります。

収入の使途調整の扱い
課税仕入れ(修繕費、工事費など)にのみ使うと決まっている控除税額から差し引く(課税仕入れ等に係る特定収入)
人件費など、課税仕入れ・課税貨物の引取り・借入金の返済以外にのみ使うと決まっている特定収入に当たらない(施行令第75条第1項第6号イ)
借入金の返済にのみ使うと決まっている特定収入には当たるが、課税仕入れ等に係る特定収入ではない(調整割合の計算に入る)
使途が特定されていない調整割合に応じて、控除税額から一部を差し引く
消費税法施行令第75条第1項・第4項から作成。実際の計算は、課税売上割合や調整割合を含む複雑な式になる

郡山市の決算書は、「資産の譲渡等の対価以外の収入の使途について」として、収入ごとの充当先を開示しています。例えば、消火栓等修繕負担金22,712,723円のうち21,362,000円は修繕費(課税仕入れ)に充てた特定収入、1,350,723円は職員給与費(不課税仕入れ)に充てた特定収入以外としています。工事負担金及び寄附金179,996,167円は、工事請負費(課税仕入れ)に172,402,847円、職員給与費等に7,593,320円を充てたと記載されています。

決算書に「課税仕入れ」に充てたと書かれている特定収入は、7件の合計で257,642,111円です。単純に110分の7.8を掛けると約1,830万円になります(水道ラボの試算で、実際の納付額の計算ではありません。5%の判定や調整割合の計算が別途必要です)。補助金や負担金が増える年度は、使途の記録を残しておくことが、申告で調整額を説明する前提になります。

実務のチェックリスト

ここまでの内容を、担当者向けの確認項目にまとめます。

  • 自団体の水道事業会計は、免税事業者かどうか。免税でない場合、申告の窓口と期限はどうなっているか(税務署に確認)
  • 仮払消費税・仮受消費税の残高が、期末に整理できているか。納付額・還付額の見込みを資金計画に入れているか
  • 資産にかかる控除対象外消費税額を、長期前払消費税として繰り延べているか。償却は20事業年度以内に均等額以上か(施行規則第20条)
  • 資本的収支の不足額の補てん財源に、資本的収支調整額を含めて整理しているか。決算統計の記入方法(作成要領)と一致しているか
  • 補助金・負担金・寄附金について、使途を示す文書(交付要綱など)を残しているか。5%の判定ができるか
  • 時期の特例(会計年度末日に行われたものとする扱い)を使っているか。使うなら毎期同じ扱いか

消費税は、条文と通知を読み込むほど細部が増えます。まず、仕訳(施行規則)、補てん財源(決算統計)、納税計算(消費税法)の3つが、自団体の決算書でどう結びついているかを一度図にして、後任に残すことをお勧めします。自団体の指標の状況は、事業体カルテで確認できます。

参考資料

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この記事を書いた人

「Suido Lab」運営者。地方自治体の水道事業で財務・会計業務に長年携わってきた実務者です。予算編成や決算処理、起債シミュレーションなど、現場で培った知識をもとに、水道事業の財務や経営に関する情報をわかりやすく発信しています。研究発表や業界イベントへの参加経験もあり、実務と学びの両面から得られた知見を共有することを目指しています。専門的な内容をできるだけ平易に解説し、同じ立場の方々に役立つ情報を届けたいと考えています。

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