料金回収率が100%を割る理由――供給単価と給水原価に分けて考える

青い背景に水滴のマークを配した、水道ラボの記事画像

料金回収率が100%を下回っている。経営比較分析表の分析欄や、議会の質疑で、この数字の説明を求められた経験のある担当者は多いと思います。国の公開データで数えると、2024年度決算で料金回収率が100%を下回った末端給水事業は、全国1,230事業のうち691事業(56.2%)でした。10年前の2014年度は35.7%です。

この記事では、料金回収率を「供給単価」と「給水原価」に分けて、なぜ100%を割るのか、どう説明し、どこから手を打つのかを整理します。

目次

料金回収率は「1㎥あたりの料金」と「1㎥あたりの費用」の比

料金回収率は、給水にかかる費用をどれだけ料金収入でまかなえているかを示す指標です。算式は次のとおりです(枚方市「経営比較分析表」資料、水道技術研究センター「給水原価と供給単価」)。

指標算式
料金回収率(%)供給単価 ÷ 給水原価 × 100
供給単価(円/㎥)給水収益 ÷ 年間有収水量
給水原価(円/㎥){経常費用 −(受託工事費+材料及び不用品売却原価+附帯事業費)− 長期前受金戻入}÷ 年間有収水量

分母と分子のどちらも「有収水量1㎥あたり」なので、料金回収率は1㎥あたりの料金収入と、1㎥あたりの費用の比になります。100%を下回るのは、給水の費用の一部を、料金以外の収入でまかなっている状態です。

給水原価では、経常費用から長期前受金戻入を差し引いている点に注意してください。補助金などで取得した資産の減価償却費のうち、補助金に相当する部分は、料金で回収すべき費用から除かれています。

全国の10年:単価は5%、原価は11%上がった

末端給水事業の中央値2014年度2019年度2024年度
供給単価173.6円176.6円182.9円
給水原価167.1円172.8円185.6円
1か月20㎥の料金(口径13mm)2,800円2,877円2,956円
料金回収率が100%未満の事業の割合35.7%39.9%56.2%
国の公開データから水道ラボが集計

この10年で、全国の中央値で見た供給単価は約5%上がった一方、給水原価は約11%上がりました。2019年度ごろまでは単価が原価を上回っていましたが、2024年度には中央値でも原価が単価を上回るようになっています。料金改定が費用の増加に追いついていない事業が増えた、と読めます。

費用の構成を中央値で比べると、委託費の割合が7.4%から11.1%に、減価償却費の割合が38.7%から41.8%に上がり、人件費の割合は10.6%から9.2%に下がりました。職員で行っていた業務を外部に委ねる動きと、更新投資の増加が表れていると考えられます。一方で有収率の中央値は86.4%から84.4%に下がっており、料金にならない水が増えていることも、1㎥あたりの原価を押し上げる要因です。

小さな事業ほど100%を割りやすい

給水人口事業数100%未満の割合料金回収率の中央値給水原価の中央値
1万人未満23871.4%87.8%241.5円
1万〜3万人38360.3%96.9%193.2円
3万〜5万人19452.6%99.3%184.1円
5万〜10万人18549.2%100.2%177.2円
10万〜30万人16241.4%101.0%164.4円
30万人以上6844.1%100.7%164.7円
2024年度決算・末端給水事業。国の公開データから水道ラボが集計

給水人口1万人未満の事業では、7割以上が100%を割っています。1㎥あたりの費用が241.5円と、30万人以上の事業の約1.5倍です。管路や浄水場の固定費を少ない利用者で分け合う構造なので、規模が小さいほど1㎥あたりの原価が高くなるのは避けにくい面があります。

自分の事業体の値は、水道事業体カルテで、規模の近い類似団体の中央値と比べられます。全国平均ではなく、同じ規模の団体と比べて説明することが大切です。

100%未満でも経常黒字の事業が多い理由

2024年度に料金回収率が100%未満だった691事業のうち、452事業(65%)は経常収支比率が100%以上、つまり経常黒字でした。料金だけでは原価をまかなえていなくても、他会計からの補助金や、料金以外の営業収益などで不足を埋めているためです。

この状態は、すぐに資金が尽きることを意味しません。ただし、料金以外の収入に頼った黒字は、補助の見直しや更新投資の増加で崩れやすいものです。経常収支比率と料金回収率は、必ずセットで見て説明します。

説明するときは「単価」と「原価」に分ける

料金回収率の変化を説明するときは、まず分子と分母のどちらが動いたのかを分けます。

動いたものよくある理由確認する資料
給水原価が上がった動力費・委託料・修繕費の増加、減価償却費の増加(更新投資)、有収水量の減少損益計算書、収益費用明細書
供給単価が下がった使用水量の減少で単価の高い段階の水量が減る、大口需要の減少料金の調定の内訳
有収水量が減った人口減少、節水、漏水の増加(有収率の低下)配水量と有収水量の推移

たとえば「料金回収率が3ポイント下がった」ではなく、「動力費の増加で給水原価が1㎥あたり6円上がり、料金回収率が3ポイント下がった」と説明できれば、対策の議論につなげやすくなります。

手を打つ順番

  1. 有収率を上げる:漏水を減らせば、同じ費用でも有収水量が増え、給水原価が下がる
  2. 費用の伸びを抑える:委託の範囲や契約の見直し、施設の統廃合やダウンサイジング
  3. 料金を見直す:原価の見通しをもとに、改定の必要性と時期を検討する(経営戦略の改定と一体で)

料金の見直しは住民への影響が大きいため、1と2の取り組みを示したうえで、それでも埋まらない差を料金で回収するという順序で説明するのが一般的です。料金改定の具体的な進め方は、別の記事で取り上げる予定です。

参考資料

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この記事を書いた人

「Suido Lab」運営者。地方自治体の水道事業で財務・会計業務に長年携わってきた実務者です。予算編成や決算処理、起債シミュレーションなど、現場で培った知識をもとに、水道事業の財務や経営に関する情報をわかりやすく発信しています。研究発表や業界イベントへの参加経験もあり、実務と学びの両面から得られた知見を共有することを目指しています。専門的な内容をできるだけ平易に解説し、同じ立場の方々に役立つ情報を届けたいと考えています。

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