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【企業債償還比率】財政健全化判断の基本と算定構造をやさしく解説

🕒 読了目安:8分
💡 ご自身の水道事業の経営を見て、「借金返す余裕あるかな…?」と不安を抱くことがあるかもしれません。その不安を数値でつかむツールの一つが 企業債償還比率 です。今回は、この指標の意味・構造・注意点を解説します。


目次

☕「企業債償還比率」ってどんなもの?

簡単に言えば、事業収益のうち、借金を返すために使われる割合を表す指標です。
水道事業では、設備や施設更新による借入(企業債)が多く、この返済負担が経営をしめつけることがあります。

この指標は、地方公共団体の財政健全化を図る「健全化判断比率」の一部として、公共団体にも義務的に算定・公表が課されています。( 参考:地方公共団体の財政の健全化に関する法律(財政健全化法)


構造を知ろう:分子・分母と計算式

📌 基本式(%表示)

企業債償還比率 =(企業債元利償還額 ÷ 営業収益) × 100
  • 分子(企業債元利償還額):元金返済+利息支払額の合計。
  • 分母(営業収益):水道料金収入・加入金・受託収入などの 事業収益全体

例を出すと

項目金額(百万円)説明
営業収益2,500水道料金など
元利償還額250元金200 + 利息50
償還比率10.0%=250 ÷ 2,500 × 100

このモデルなら、収益の10%が借金返済に充てられている、という感覚になります。

参考として、公営企業の用語解説でも「企業債元利償還金対料金収入比率」などの類似指標が紹介されています。 (参考:hygshinko.or.jp


この比率、どう使われるの?目安と見るべき視点

🔍 目安はどこに?

健全化判断比率の中の「実質公債費比率」は、地方債や企業債の返済負担を捉える指標で、その枠組みに近い性格を持ちます。一般に、25%前後が早期健全化基準の目安とされています。(参考:防府市公式サイト)
ただし、水道事業だけを切り取った指標には明確な全国基準がないため、あくまで比較目線・自団体の過去との比較で判断が重要です。

📈 単年度だけで判断しないで!

  • 更新投資や臨時的な借入で一時的に比率が高まることがあります。
  • 金利の変動、借り換え条件の変更、補助金や繰入の有無も影響を与えます。

したがって、「過去5年程度の推移」や「他事業(上水・下水など)との比較」で傾向を読むことが実務では肝要です。


注意したいポイント

  • 借金返さないことが最善?
     返済比率が低くても、設備更新を絞りすぎればサービス低下に繋がるリスクあり。
  • 営業収益の範囲を揃える
     「料金収入のみ」で比率を出すのは誤差を生みやすい。加入金・受託収入も含めて検討を。
  • 繰入金の補填が多いと実態が見えにくくなる
     他会計からの繰入を多用している場合、実際の事業収益での返済力を別に評価すべき。

公表データから拾える実例

たとえば、神奈川県のある市では、令和5年度決算に基づく資料で、実質公債費比率の算定において「公営企業債に対応する繰出金」などが含まれる形で計算しているデータが見られます。(参考:伊勢原市公式サイト

また、福井県坂井市の資料では、実質公債費比率が令和4年度で 7.8% という実例も出ています。(参考:堺市公式サイト
このような数字を、自分の団体と比較する出発点にできます。


今日のまとめ(コラム風)

  • 企業債償還比率 は、借金返済の“重み”を収益ベースで感じ取るための指標。
  • 単年度だけで判断せず、期間推移や背景要因に目を配ることが大切。
  • 公表データとの比較をすることで、自団体の立ち位置をつかめます。
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この記事を書いた人

「Suido Lab」運営者。地方自治体の水道事業で財務・会計業務に長年携わってきた実務者です。予算編成や決算処理、起債シミュレーションなど、現場で培った知識をもとに、水道事業の財務や経営に関する情報をわかりやすく発信しています。研究発表や業界イベントへの参加経験もあり、実務と学びの両面から得られた知見を共有することを目指しています。専門的な内容をできるだけ平易に解説し、同じ立場の方々に役立つ情報を届けたいと考えています。

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